奴多之神社|猿の石像が集まる、秋鹿郡の小さな古社
田畑の先、山裾に見える鳥居。その奥の小さな社殿には、「奴多之神社」の額が掲げられています。
島根県松江市大垣町に鎮座する奴多之神社(ぬたしじんじゃ)は、『出雲国風土記』秋鹿郡の「奴多之社」に比定される神社です。御祭神は猿田彦命。社殿の床下や境内に置かれた猿の石像も、この神社を訪ねたときに目を引く存在です。
神楽殿や境内の小祠、一対の狛犬にも足を止めながら、山裾の境内を巡ります。
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奴多之神社の概要と『出雲国風土記』
奴多之神社は、島根県松江市大垣町1766-8に鎮座しています。『出雲国風土記』でいう秋鹿郡の神社を訪ねる際に、立ち寄りたい一社です。
秋鹿郡の神社を列挙する部分には、次の社名が見えます。
奴多之社
『出雲国風土記』秋鹿郡・神社条の社名部分です。神祇官に属さないとされた神社を並べる箇所に記されています。現在の奴多之神社は、この社の比定先とされています。
風土記に残る短い社名と、現在の境内に掲げられた名前。その両方を確かめながら訪ねると、小さな社にも古い土地の記憶が重なって見えてきます。
御祭神と船の艫を取った神の伝承
御祭神は、猿田彦命(さるたひこのみこと)とされています。
地域の神社紹介資料では、『雲陽誌』に「艫田明神」として記される社を、現在の奴多之神社に対応させています。そこには、高ノ宮の神を乗せた船の艫を取った神として、猿田彦命を伝える話が紹介されています。
艫(とも)は船の後ろの部分。船を導いたことから「艫取」の名につながるという伝承です。また、『旧秋鹿村誌』の由緒を紹介する資料には、高姫命を導いた猿田彦命が、この地に鎮座したと伝えられています。
これらは、風土記の社名列挙とは分けて受け止めたい、後世の地誌や地域に伝わる由緒です。創建の年を具体的に定めることはできませんが、高ノ宮との関わりを伝える話として興味深いものがあります。
祭神・由緒の参照:「奴多之神社」地域の神社紹介、『旧秋鹿村誌』などの由緒を紹介する記事。
鳥居から社殿へ|境内を写真で巡る
田畑の先に見える鳥居
境内へ向かう道の先には、木立を背にした鳥居と神楽殿が見えてきます。大きな社叢の中へ深く入るというより、田畑のそばから山裾の一角へ進んでいくような参拝です。
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鳥居の前まで進むと、その向こうに境内の建物が見渡せます。社殿だけでなく、周囲の小祠まで見ながら歩ける広がりです。
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鳥居のそばに立つ一対の狛犬
鳥居付近では、一対の狛犬が迎えてくれます。石肌には苔や風化の跡が見られ、胴体や顔の輪郭にもそれぞれ違いがあります。
この二体は、後で紹介する猿の石像とは別のものです。境内では、狛犬と猿像の姿を見比べてみるのも楽しみの一つです。
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社殿に掲げられた「奴多之神社」の額
境内の奥に鎮座する社殿は、屋根の輪郭と正面の注連縄が印象に残ります。近づくと、金色の文字で「奴多之神社」と記された社号額を確かめることができます。
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床下や境内に集まる猿の石像
社殿の床下に目を向けると、いくつもの石像が置かれています。今回の参拝で、とりわけ印象に残ったのが猿の石像です。
御祭神の猿田彦命と猿像を結び付けて紹介する地域資料もあります。ただし、個々の石像がいつ、どのような願いで置かれたのかは、一体ずつの姿だけでは分かりません。ここでは、境内に残る姿を見ていきます。
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床下だけでなく、台座の上にも猿の石像があります。鳥居付近の狛犬とは異なる、丸みのある姿が目を引きます。
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瓦屋根の神楽殿
境内には、横に長い瓦屋根の神楽殿も建っています。小さな本社の社殿とは、建物の大きさも姿も異なります。
正面には柱が並び、その奥に木の建具が続いています。本社への参拝を終えた後、神楽殿を見渡すと、境内全体のつくりも捉えやすくなります。
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牛頭天王社
本社のそばには、牛頭天王社が祀られています。石積みの上に小さな木造の祠が据えられ、屋根の下には注連縄が見えます。
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稲荷大明神
稲荷大明神の石碑と、その隣の石祠も残っています。石碑には「稲荷大神」の文字が刻まれ、石祠の内側には石が納められています。
木造の社殿とは違ったかたちで、境内の一角に信仰の場が設けられていることが分かります。
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歳徳神
境内には、歳徳神を祀る木造の建物もあります。板張りの壁と屋根を持つ姿で、そのそばには、先ほど紹介した台座上の猿像が見えます。
本社、神楽殿、境内の小さな社を順に見ていくと、限られた境内にも、いくつもの祈りの場があることに気づかされます。
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田畑と山裾に囲まれた立地
奴多之神社の境内は、田畑と斜面が接する山裾にあります。参拝路から振り返っても、境内から周囲を見ても、農地と神社が近い距離にあることが分かります。
猿田彦命が船を導いたという伝承を思い返しながら、この土地を眺めるのも一つの楽しみです。ただし、現在の参拝路や地形を、そのまま伝承当時の景観と結び付けることはできません。
社殿の大きさだけでは分からない、地域の中にある神社の姿。神楽殿や小祠、石像までゆっくり見て回りたい境内です。
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まとめ|小さな社殿と、境内に残るさまざまな姿
松江市大垣町の奴多之神社は、『出雲国風土記』秋鹿郡の奴多之社に比定される古社です。御祭神には猿田彦命を伝え、高ノ宮の神を乗せた船の艫を取ったという由緒も残されています。
参拝で目を引くのは、社殿の床下や境内に置かれた猿の石像。一対の狛犬とは異なる姿に、思わず足が止まります。神楽殿、牛頭天王社、稲荷大明神、歳徳神もあわせて巡ることで、境内の見え方が広がります。
風土記に残された社名を手掛かりに、山裾の小さな社を訪ねる。華やかさとは違う魅力を感じられる一社でした。
※記事内容には正確を期していますが、掲載情報に誤りや変更点がありましたら、お手数ですが 問い合わせフォーム からお知らせください。内容を確認のうえ、必要に応じて訂正いたします。
地図・参拝の基本情報
- 神社名:奴多之神社(ぬたしじんじゃ)
- 所在地:島根県松江市大垣町1766-8
- 風土記掲載郡:秋鹿郡
- 風土記社名:奴多之社
- 御祭神:猿田彦命
- 電話番号:公式情報をご確認ください
- 公式サイト:公式情報をご確認ください
- 御朱印:授与状況は現地または公式情報をご確認ください
- 駐車場:現地案内をご確認ください
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