ちょっと寄り道...加藤義成顕彰碑|雲南市加茂町に残る『出雲国風土記』研究者の顕彰碑を訪ねて
『出雲国風土記』に記された神社を訪ね歩いていると、 神社そのものだけでなく、この古代の地誌を読み解くことに生涯を費やした人々の足跡にも出会います。
今回の「ちょっと寄り道」は、雲南市加茂町南加茂にある 加藤義成顕彰碑です。
加藤義成は、『出雲国風土記』研究に長年取り組んだ郷土史家。 現在でも『出雲国風土記』を調べていると、その名前や著作に出会う研究者の一人です。
田園の中に残る「加藤義成先生顕彰碑」
顕彰碑があるのは、加藤義成の故郷である現在の 雲南市加茂町南加茂。 周囲には田畑が広がり、その一角に大きな自然石を使った碑が建っています。
華やかな観光施設の中にあるわけではありません。 むしろ、出雲の山々と田園を望む静かな土地に建っていることが、 郷土の歴史を追い続けた加藤義成という人物によく似合っているようにも感じました。
加藤義成とは?
加藤義成(かとう・よしなり)は、 1905年(明治38年)生まれ、1983年(昭和58年)没の郷土史家です。 島根師範学校を卒業後、国語教師などを務め、 その後も長年にわたって『出雲国風土記』の研究を続けました。
『出雲国風土記』研究では、 本文の校訂だけでなく、地名や遺跡、古代出雲の社会や信仰など、 さまざまな角度から検討を重ねています。
代表的な著作には、 『出雲国風土記参究』、 『風土記時代の出雲』、 『出雲国風土記論究』などがあります。
現在でも『出雲国風土記』について調べていると、 加藤義成の研究に行き当たることがあります。 私自身、このブログで風土記掲載社や比定地を調べていく中で、 改めてその研究の積み重ねの大きさを感じています。
「出雲国風土記」を現地から読み解いた研究者
『出雲国風土記』は天平5年(733年)に完成したとされる古代出雲の地誌です。
そこには郡や郷の名前だけでなく、 山、川、海、地名の由来、産物、そして数多くの神社が記録されています。
しかし、約1300年前の記述を現在の地理と結びつける作業は簡単ではありません。 地名が変化した場所もあれば、 神社が移転したと考えられる例もあります。
加藤義成は文献だけを見るのではなく、 古代の地名や遺跡などについても検討しながら、 『出雲国風土記』の世界を読み解こうとしました。
いま私が風土記掲載社を一社ずつ訪ねながら、 「この神社は本当にここなのだろうか」 「風土記に書かれた場所はどこなのだろうか」 と考えている作業のはるか以前から、 同じ出雲の地でこうした問いと向き合っていた研究者がいたことになります。
顕彰碑を別の角度から見る
大きな自然石の中央には、 「加藤義成先生顕彰碑」 と刻まれた石板があります。
その横には、もう一つ小さな石碑も置かれています。
2025年10月20日に訪れて感じたこと
今回この場所を訪れたのは、 2025年10月20日でした。
実際に現地へ行ってみて、少し残念に感じたこともあります。
写真をご覧いただくと分かるように、 訪問時には顕彰碑の周囲にかなり草が生い茂り、 石碑の台座や隣にある碑の一部まで草に覆われていました。
『出雲国風土記』研究に大きな足跡を残した人物を顕彰する碑だけに、 もう少し石碑の姿が見える状態で残されていたら、 訪れた人にもその存在や意味が伝わりやすいのではないか――。 現地を前にして、そんなことを感じました。
もちろん、地域の石碑を継続して維持することには、 管理する人手や時期など、さまざまな事情があると思います。 そのため管理そのものを批判するつもりはありません。
それでも、『出雲国風土記』を調べている一人としては、 加藤義成という人物とその業績を伝えるこの場所が、 これからも大切に残されていってほしいと思いました。
草の中に隠れかけていたもう一つの碑
特に気になったのが、顕彰碑の横に置かれているこの石碑です。
訪問した日は草が碑面の前まで伸びており、 文字をじっくり確認することが難しい状態になっていました。
今回の記事では、あえて草を消すなどの画像加工をせず、 2025年10月20日に私が実際に見た状態をそのまま掲載しています。
現地を訪ねる記事だからこそ、 きれいに整えられた姿だけではなく、 その日にその場所がどのような状態だったのかを残しておくことにも意味があると考えています。
加藤義成の著作は今も『出雲国風土記』研究につながっている
加藤義成の研究成果は、本人の死後も書籍として残されています。
国立国会図書館には、 『修訂出雲国風土記参究』、 『出雲国風土記論究』、 『出雲国風土記』校注など、 加藤義成による複数の著作が所蔵・記録されています。
現在、私たちが『出雲国風土記』の神社や地名を調べるとき、 こうした先人たちが積み重ねてきた研究の上に立っていることを忘れてはいけないでしょう。
加藤義成顕彰碑の場所
顕彰碑は、島根県雲南市加茂町南加茂の田園地帯にあります。 周辺は住宅や農地がある地域ですので、 訪問する際は地元の方や農作業の邪魔にならないよう配慮してください。
※地図は位置確認用です。周辺には私有地や農地があります。現地では道路状況や土地の境界に十分注意してください。
まとめ|『出雲国風土記』を追う旅で出会った先人
今回は神社ではなく、 『出雲国風土記』研究に生涯をささげた 加藤義成の顕彰碑へ寄り道しました。
古代の文献を読み、 地名を調べ、 実際の出雲の土地と照らし合わせながら、 その世界を明らかにしようとした人がいました。
そしてその研究者が生まれた南加茂の田園の中に、 今も静かに顕彰碑が残っています。
2025年10月20日の訪問時には草が生い茂っており、 碑が十分に見えない状態だったことは、 『出雲国風土記』を追いかけている者として少し残念でもありました。
一方で、今回その姿を写真として残せたことにも意味があると思っています。
『出雲国風土記』掲載社を巡る旅では、 神社だけでなく、 その研究を支えてきた人々の足跡にも時折出会います。
そんな場所も、 これから「ちょっと寄り道」として紹介していきたいと思います。
参考資料
- 国立国会図書館サーチ「加藤義成」著作情報
- 『修訂出雲国風土記参究』
- 『出雲国風土記論究』
- 『出雲國風土記』加藤義成校注
- 山陰中央新報「さんいん偉人学 『出雲国風土記』研究の第一人者・加藤義成」
お問い合わせ
記事の内容についてお気づきの点や、
『出雲国風土記』掲載社に関する情報がありましたら、
ブログのお問い合わせフォームからお知らせください。

0 件のコメント:
コメントを投稿