【出雲国風土記】意宇の杜(意宇の森)とは?|「意恵(おえ)」の言葉が生まれた場所
八束水臣津野命(やつかみずおみつぬのみこと)が国引きを終え、
意宇(おう)の杜に杖を衝き立てて「意恵(おえ)」と語った——。
『出雲国風土記』に記されるこの場面は、意宇という地名の由来を語る重要な一節です。
本記事では、意宇の杜とはどのような場所なのか、国引き神話との関係とあわせて読み解きます。
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| 意宇の森で杖を立て、「意恵」と名づける八束水臣津野命の情景 |
意宇の杜とは何か
意宇の杜(おうのもり)は、『出雲国風土記』の国引き神話の終盤に登場する場所です。
八束水臣津野命が国を引き、出雲のかたちを整えたあと、その歩みを止めた地点として語られます。
重要なのは、意宇の杜が「国を引く途中」ではなく、
すべてを終えたあとの静かな場面として描かれている点です。
国引き神話は、動きのある場面が多い物語ですが、
意宇の杜ではじめて「立ち止まり、言葉を発する」場面が現れます。
「意恵(おえ)」という言葉
『出雲国風土記』によれば、八束水臣津野命は意宇の杜で、
杖を地に衝き立てて「意恵(おえ)」と語ったとされます。
その言葉にちなみ、この地は意宇(おう)と呼ばれるようになった——
これが風土記に示された、意宇という地名の由来です。
- 意:心・思い
- 恵:満ちる・かなう
「意恵」という言葉は、
思いが満ち、成し遂げたことを実感する声として読むことができます。
国引き神話の終着点としての意宇の杜
国引き神話では、綱をかけ、国を引き、浜や岬を縫い合わせるという、
大きな動きが次々と描かれます。
その最後に置かれているのが、意宇の杜です。
ここでは新たな行為は行われず、ただ立ち止まり、言葉が語られるのみ。
出雲神話の中でも珍しい、「達成感」や「満足」を言葉にする場面です。
▶ 国引き神話全体の流れ(杭と綱、引いた国の話)については、こちらの記事で詳しく解説しています:
【出雲国風土記】八束水臣津野命とは?|国引き神話の主役を読み解く
意宇の杜の比定地について
意宇の杜については、現在の場所を一か所に断定することはできません。
文献や案内では、意宇地域の複数地点が比定地候補として挙げられています。
これは、意宇の杜が特定の社殿や一点ではなく、
「意宇という土地を象徴する森・景観」として捉えられていた可能性を示します。
本記事では、特定の場所を断定せず、
意宇郡一帯に広がる「神話の終点」として理解する立場をとります。
まとめ
- 意宇の杜は、国引きを終えた八束水臣津野命が立ち止まった場所
- 「意恵(おえ)」の言葉が、意宇という地名の由来となった
- 動の神話から静の場面へ切り替わる、重要な転換点


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