【出雲国風土記】御井神社(御井社)|木俣神を祀る安産と水の古社|出雲郡・出雲市斐川町
出雲市斐川町直江に鎮座する御井神社は、『出雲国風土記』出雲郡条に「御井社」と記される古社です。
大国主神と八上姫の御子である木俣神を主祭神とし、安産や水の守護神として信仰されてきました。
社殿の周辺には、御子の産湯に使われたと伝わる綱長井・生井・福井が残り、神社の由緒と土地に伝わる水の信仰をあわせて知ることができます。
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御井神社の概要と『出雲国風土記』の記載
御井神社は、島根県出雲市斐川町直江に鎮座する神社です。読み方は「みいじんじゃ」。現在の斐川町一帯は、古代の行政区分では『出雲国風土記』の出雲郡に含まれます。
天平五年〈733年〉に編纂された『出雲国風土記』の出雲郡条には、地域の神社を列挙する箇所に次の一節が見られます。
「同社 同社 鳥屋社 御井社」
『出雲国風土記』出雲郡条・神社
この御井社が、現在の御井神社に比定されるとされています。御井社は神祇官に属する神社の一覧に記されており、奈良時代にはすでに、この地域で祭祀が営まれていたことをうかがわせます。
さらに、平安時代にまとめられた『延喜式』神名帳にも、出雲国出雲郡の御井神社として社名が見えます。風土記と延喜式の双方に名前を残すことから、斐川の歴史を考えるうえでも見逃せない古社です。
『出雲国風土記』に記された御井社と現在の神社との関係は、國學院大學「御井神社」でも紹介されています。
御祭神と八上姫・木俣神の由緒
御井神社の主祭神は、木俣神〈このまたのかみ〉です。『古事記』では御井神〈みいのかみ〉という別名でも記され、大国主神と八上姫の御子神と伝えられています。
現地の由緒板によると、八上姫は大国主神に会うため出雲へ向かいましたが、正妻である須世理姫の立場を慮り、引き返すことになりました。
その途中、神奈火山の麓にあたる直江の里で産気づき、御子を出産したと伝えられます。その際に掘られたのが、生井・福井・綱長井という三つの井戸です。
八上姫は、その水を御子の産湯に用いたのち、御子を木の俣に託して因幡へ帰ったとされます。この伝承から、御子は木俣神、または御井神と呼ばれるようになりました。
木の俣の 三井の産湯の水なれば
御井神社・現地由緒板
祈らん人ぞ 守る神垣
この由緒にちなみ、御井神社は安産・子授け・子どもの健やかな成長を願う人々から信仰されています。同時に、暮らしに欠かせない水を守る神社としても、地域に親しまれてきました。
本殿・鳥居・参道・境内社
本殿|木立の中に建つ社殿
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拝殿の奥に建つ本殿は、周囲の木立に守られるように設けられています。社殿の床が高く、屋根の上に千木が見えることからも、出雲地方の神社建築らしい姿が感じられます。
本殿の周辺からは、社叢の向こうに斐川の田園風景がのぞきます。神社の境内と地域の暮らしが近い距離でつながっていることがわかります。
鳥居|田園風景に向かって開かれた入口
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社頭の鳥居は、田園に面した道路沿いに建っています。鳥居の向こうにはまっすぐ参道が延び、その先に社号標と石段が見えます。
周囲に広がる水田と社叢の組み合わせは、水と結び付いた御井神社の信仰を考えるうえでも、印象的な風景です。
参道|社号標から石段を上る
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参道の途中には「御井神社」と刻まれた大きな社号標が立ち、その奥の石段を上ると境内に入ります。
周囲の田地よりわずかに高い場所に社殿が置かれており、平野の中で神社の位置が自然に認識できる造りになっています。
境内社・天神|木立の中の小さな社
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境内の一角には、天神と呼ばれる小さな社も祀られています。社の前には一対の狛犬が置かれ、背後には田園と周辺の道が広がります。
本殿や拝殿だけでなく、こうした境内社にも目を向けると、地域の人々が複数の信仰を重ねながら神社を守ってきた様子が伝わります。
斐川平野に面した神社の立地
御井神社は、出雲市斐川町直江の田園地帯に位置しています。広い平野の中に社叢がまとまって見え、参道は周囲の田地から少し高い境内へ向かいます。
神社の近くには三つの井戸が点在しており、社伝と周辺の景観を一緒にたどることができます。
現在、井戸は神社の外にありますが、現地案内板では戦国時代まではその一帯も境内だったと伝えています。社殿だけでなく周辺を歩くことで、御井神社の信仰が水と土地に結び付いていることを具体的に感じられます。
御井神社のまとめ
御井神社は、『出雲国風土記』出雲郡条に御井社として記される古社です。
主祭神の木俣神と母神の八上姫にまつわる由緒は、安産への願いと、暮らしを支える水への信仰を今に伝えています。
拝殿・本殿・鳥居・境内社を巡ったあとは、神社の周辺に残る三つの井戸にも足を運ぶと、御井神社の歴史を現地の景観とともに知ることができます。
八上姫と木俣神ゆかりの三つの井戸
御井神社の近くには、八上姫が木俣神の産湯に用いたと伝わる綱長井・生井・福井があります。
現地案内板では、三つの井戸について「母神・八上姫が湯あみされ、また当社木俣神を産湯なされた霊泉」と説明しています。
以下では、綱長井、生井、福井の順に紹介します。なお、御井神社の公式案内では、実際の参拝順を生井→福井→綱長井としています。
綱長井|母子の長寿と家内安全を願う井戸
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綱長井〈つながい〉は、御井神社の鳥居を出て北へ約50メートル進んだ場所にある井戸です。
案内板では、「つるべの綱の長い井」と説明されています。御井神社では、母子の長寿と家内安全に関わる水神として案内しています。
井戸の周囲は石柵で囲われ、入口には注連縄が掛けられています。木々に囲まれた落ち着いた場所にあり、現在も大切に守られていることがわかります。
三つの井戸の中では、母と子の寿命を見守る場所として位置付けられており、安産だけでなく、その後の健やかな暮らしを願う信仰につながっています。
生井|子安と病気平癒を願う井戸
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生井〈いくい〉は、御井神社の駐車場の南側にある井戸です。
現地案内板では「生気ある神」と説明され、子安や病気平癒に関わる井戸として紹介されています。
井戸の周囲には松の木が植えられ、石柵と注連縄によって守られています。開けた場所にあるため、周辺の景観とあわせて井戸の位置を確認しやすくなっています。
御井神社では、母子の生命を司る水神として案内されています。三つの井戸を巡る際は、公式案内に従うと、最初に参拝する場所です。
福井|母子の発展と家運隆昌を願う井戸
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福井〈さくい〉は、生井から南へ約50メートル進んだ場所にある井戸です。
栄久井とも呼ばれ、現地案内板では「栄える井」と説明されています。母と子の幸せを守る水神として、母子の発展と家運隆昌を願う信仰が伝わります。
石柵に囲まれた井戸の前には小さな狛犬が置かれ、注連縄も掛けられています。周囲の草木に囲まれながら、地域の人々に守られてきた様子がうかがえます。
生井が生命、福井が幸せと発展、綱長井が長寿を担うとされ、三つの井戸をあわせて巡ることで、御井神社に伝わる母子守護の信仰を知ることができます。
御井神社の基本情報・連絡先
| 神社名 | 御井神社〈みいじんじゃ〉 |
|---|---|
| 風土記の社名 | 御井社〈出雲郡〉 |
| 主祭神 | 木俣神〈御井神〉 |
| 所在地 | 〒699-0631 島根県出雲市斐川町直江2518 |
| 電話番号 | 0853-72-3146 |
| 公式サイト | 御井神社公式サイト |
| 御朱印 | あり。受付状況・初穂料は社務所または公式情報をご確認ください。 |
| 駐車場 | あり。約10台・無料。 |
| 交通アクセス | JR山陰本線・直江駅から車で約5分。山陰自動車道・斐川ICから車で約5分。 |
| 三井の参拝順 | 綱長井→生井→福井 |
駐車場・アクセス情報は、島根県公式観光情報サイト「しまね観光ナビ」でも確認できます。
アクセス・Googleマップ
御井神社は、出雲市斐川町直江の田園地帯にあります。三つの井戸は神社周辺に点在しているため、社頭の案内図を確認してから巡ると位置関係がわかりやすくなります。
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~出雲国風土記探訪~ @ぐうたら亭主
初掲載日:2026年8月23日
最終更新日:2026年8月23日









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