【出雲国風土記】大原郡 山野河川海岸通道|斐伊川と須我山をめぐる古代の風景|大原郡・雲南市周辺
「出雲国風土記」の中でも、とくに山・川・境界・通路をまとめて記した一節が「山野河川海岸通道」です。
城名樋山・高麻山・須我山、斐伊川・海潮川・須我小川など、
現在の島根県雲南市周辺に広がる山河の姿と、そこに息づく神話の記憶をたどってみませんか?
大原郡の位置と概要
| 郡名 | 出雲国 大原郡(おおはらのこおり) |
|---|---|
| 現在の概ねの範囲 | 島根県雲南市から飯石郡・仁多郡境にかけての山間地域(おおよその比定) |
| 特徴 |
斐伊川上流域を中心に、高麻山・須我山・御室山などの山々が連なり、 周囲には豊かな森と薬草、山の獣たちが棲む「山野の中」として描写されています。 |
出雲国風土記の記述(山・川・通路)
「山野河川海岸通道」の条では、大原郡の山・川・郡境・通路がまとめて紹介されています。
冒頭では莵原野(うはらぬ)という野が、郡家から見て正東に広がることが記され、郡家に属していたことが述べられます。
つづいて、城名樋山(きなひやま)では、所造天下大神大穴持命(おほなもちのみこと)が八十神を討つために城を築いたことから、その名が付いたとされています。
また高麻山(たかさやま)は、須佐之男命の御子・靑幡佐草日古命(あをはたさくさひこのみこと)が山頂に麻をお植えになったことにちなみ「高麻山」と呼ばれるようになったと伝えられています。
須我山・船岡山・御室山など、それぞれの山には神々にまつわる由来が添えられ、
さらに、斐伊川・海潮川・須我小川・佐世小川・幡屋小川・屋代小川といった川の流れや魚種(鮎・鱒など)の豊かさまで細かく記録されています。
終盤では、多数の薬草(苦参・桔梗・葛根など)や木々(檜・杉・楮・楊梅など)、
鷹・隼・山鳥・熊・猪・鹿・猿・ムササビといった禽獣の名が列挙され、
大原郡が山の恵み豊かな「山野の中」であったことがよく伝わってきます。
さらに意宇郡・仁多郡・飯石郡・出雲郡それぞれとの境へ通じる距離が、
「何里何歩」といった形で具体的に記されており、古代の交通・通路(通道)を知るうえでも貴重な資料となっています。
出雲国風土記「大原郡 山野河川海岸通道」原文
▼ 出雲国風土記「大原郡 山野河川海岸通道」原文を開く
大原郡 山野河川海岸通道
莵原野。郡家の正東なり。卽ち郡家に屬けり。
城名樋山。郡家の正北一里一百歩なり。所造天下大神大穴持命、八十神を伐たむとして城を造りたまひき。故、城名樋と云ふ。
高麻山。郡家の正北一十里二百歩なり。高さ一百丈、周り五里あり。北の方に樫・椿等の類有り。東南西の三方は並びに野なり。古老の傳へに云へらく、神須佐能袁命の御子、靑幡佐草日古命、是の山の上に麻蒔き給ひき。故、高麻山と云ふ。卽ち此の山の岑に坐すは、其の御魂なり。
須我山。郡家の東北一十九里一百八十歩なり。檜・杉あり。
船岡山。郡家の東北一十六里なり。阿波枳閇委奈佐比古命の曳き來て居ゑましし船、則ち此の山是れなり。故、船岡と云ふ。
御室山。郡家の東北一十九里一百八十歩なり。神須佐乃乎命、御室を造らしめ給ひて、宿らせる所なり。故、御室と云ふ。
凡そ、諸の山野に在る所の草木は、苦參・桔梗・菩茄・白芷・前胡・獨活・卑解・葛根・細辛・茵芋・白前・決目・白歛・女委・薯預・麥門冬・藤・李・檜・杉・栢・樫・櫟・椿・楮・楊梅・梅・槻・蘗。禽獸には則ち鷹・晨風・鳩・山鷄・雉・熊・狼・猪・鹿・莵・獼猴・飛鼯あり。
斐伊川。郡家の正西五十七歩なり。西に流れて、出雲郡の多義村に入る。年魚・麻須あり。
海潮川。源は意宇と大原との二郡の堺なる笶村山より出でて北に流れ、海潮より西に流る。年魚少しくあり。
須我小川。源は須我山より出でて西に流る。年魚少しくあり。
佐世小川。源は阿用山より出で、北に流れて海潮川に入る。魚なし。
幡屋小川。源は郡家の東北なる幡箭山より出でて南に流る。魚なし。水四水合ひて、西に流れて出雲大川に入る。
屋代小川。源は郡家の正北除田野より出で、西に流れて斐伊大河に入る。魚なし。
通道。意宇郡の堺なる木垣坂に通ふは、二十三里八十五歩なり。
仁多郡の堺なる辛谷村に通ふは、二十三里一百八十二歩なり。
飯石郡の堺なる斐伊河の邊に通ふは五十七歩なり。
出雲郡の堺なる多義村に通ふは、一十一里二百二十歩なり。
前の件の三郡は、並びに山野の中なり。
現地写真ギャラリー
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アクセス・周辺情報
大原郡の中心とされる地域(現在の島根県雲南市周辺)。
各山・川の比定地については、史料や現地案内板をあわせてご確認ください。
お問い合わせ
| 所在地 | 島根県雲南市周辺(大原郡域の推定範囲) |
|---|---|
| TEL | ―(史跡全体としてのお問い合わせは、雲南市・地域の観光協会などへ) |
| 駐車場 | 各神社・史跡・展望地ごとに異なります。現地案内板や公式情報をご確認ください。 |
| 参考 | 雲南市公式サイト・観光協会サイト等 |
| 公式 | 雲南市観光協会 | うんなん旅ネット |


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