【出雲国風土記】朝山神社(淺山社)|神在月に八百万神を迎える朝山十九社と宇比多伎山の古社|神門郡・出雲市朝山町
島根県出雲市朝山町の山上に鎮座する朝山神社〈あさやまじんじゃ〉は、『出雲国風土記』神門郡条に記された「淺山社」に比定されるとされる古社です。
主祭神は、神魂命の御子とされる眞玉著玉之邑日女命〈またまつくたまのむらひめのみこと〉。風土記には、大穴持命がこの姫神を妻として毎朝通ったことから「朝山」と呼ばれるようになったという地名由来が記されています。
境内には、神在月に八百万神が滞在すると伝わる朝山十九社もあります。この記事では、風土記の記載と現地の社記を確認しながら、拝殿・本殿・鳥居・随神門・境内社・山上からの眺望を写真とともに紹介します。
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| 朝山神社の拝殿。朱色の瓦屋根を載せた木造社殿が、静かな山上の境内に建っています。 |
朝山神社の概要・出雲国風土記での記載
朝山神社は、古代の神門郡朝山郷にあたる地域の山上に鎮座しています。『出雲国風土記』の神社一覧には「淺山社」と記され、現在は出雲市朝山町の朝山神社が、この社に比定されるとされています。
同じ神門郡条の朝山郷には、地名の由来が次のように記されています。
朝山郷 郡家東南五里五十六歩。神魂命御子、真玉著玉之邑日女命坐之。爾時、所造天下大神大穴持命娶給而、毎朝通坐。故云朝山。
その内容は、神魂命の御子である真玉著玉之邑日女命がこの地におられ、天下を造った大神・大穴持命が姫神を妻として毎朝通われたため、「朝山」と呼ばれるようになったというものです。
風土記には神社名だけでなく、朝山という地名と眞玉著玉之邑日女命、大穴持命との関係まで記されています。現在の朝山神社を訪ねることで、古代の地名伝承と神社の鎮座地を重ねて見ることができます。
御祭神と朝山神社の由緒
主祭神・眞玉著玉之邑日女命
現地の社記に記される御祭神は、次の三柱です。
| 主祭神 | 眞玉著玉之邑日女命〈またまつくたまのむらひめのみこと〉 |
|---|---|
| 御祭神 | 神魂命〈かみむすひのみこと〉 |
| 御祭神 | 大巳貴命〈おおなむちのみこと〉 |
眞玉著玉之邑日女命は、風土記に神魂命の御子として登場する姫神です。現地社記では「姿容端正、淑徳玉の如し」と表現され、大巳貴命が毎朝通われたことが朝山の地名由来になったと説明されています。
大巳貴命は、風土記原文に見える大穴持命と同系の神名で、一般に大国主神の別名とされます。朝山神社では、姫神と父神、姫神のもとへ通った神をともに祀る形になっています。
宇比多伎山に鎮座する古社
社記によれば、朝山神社は山美しく水清い宇比多伎山〈うひたきやま〉に古くから鎮座し、中世には「宇比多伎大明神」とも称されたと伝えられます。
創立年代は明らかではありませんが、当地の神楽歌には「ありがたや宇比多伎山の宮造り これぞ社の初めなるらむ」と歌われたといいます。『出雲国風土記』の淺山社に続き、『延喜式神名帳』には朝山神社として記載されました。
また、社記には永禄九年〈一五六六〉と文禄五年〈一五九六〉の遷宮に関する棟札が記され、毛利氏や松平氏など歴代領主から崇敬を受けたことが伝えられています。
境内と現地写真
木造鳥居から随神門へ続く参道
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| 朝山神社の木造鳥居。二基の鳥居をくぐると、木々に囲まれた石段の参道が続きます。 |
朝山神社の境内入口には、素木の木造鳥居が建っています。鳥居の先にはもう一基の鳥居と石段が見え、山上の社殿へ向かう参道の奥行きを感じさせます。
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| 参道の随神門。門を抜けて石段を上ると、正面に拝殿が現れます。 |
石段の途中には随神門があり、その先に拝殿が見えます。門と石段、社殿が一直線に並ぶ構成から、山の斜面を利用して境内が整えられていることがわかります。
大社造の本殿
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| 朝山神社の本殿。高床の社殿を玉垣が囲み、屋根には千木と勝男木が見えます。 |
拝殿の後方には、大社造の本殿が建っています。高く設けられた床、切妻屋根、千木と勝男木を備えた姿は、出雲地方の古社らしい建築的特徴を伝えます。
星宮神社と杉尾神社
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| 境内社の星宮神社。現地社記では皇之命を御祭神としています。 |
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| 豊受姫命を祀る杉尾神社。明治五年に字杉尾から朝山神社へ合殿されたと伝わります。 |
現地社記には、境内社として星宮社・舟子神社・杉尾神社・朝山十九社が記されています。星宮社は皇之命、舟子神社は猿田彦命、杉尾神社は豊受姫命を祀ります。
杉尾神社は、もとは字杉尾に鎮座していましたが、明治五年〈一八七二〉に朝山神社へ合殿されたと伝えられています。
神在月に八百万神を迎える朝山十九社
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| 朝山十九社。神在祭の期間、全国から集まる八百万神の御旅社になると伝えられます。 |
朝山十九社は、八百萬神を祀る境内社です。現地案内では、神在月になると全国から出雲へ参集した八百万神が、まず朝山神社へ立ち寄ると説明されています。
神々は旧暦十月一日から十日までの十日間、朝山十九社に逗留し、朝山神社で最初の神議に臨んだのち、出雲大社へ向かわれると伝えられます。
神在祭の期間は十九社の扉が毎日開かれ、平日は八百万神の遥拝所とされています。現地案内では、神迎神事を旧暦十月一日、神送神事を旧暦十月十日に行うと記しています。
雲井神苑から望む山並みと日本海
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| 雲井神苑からの眺望。山あいの集落と平野、その先に日本海を望むことができます。 |
朝山神社の周辺は木々に囲まれていますが、雲井神苑の開けた場所からは、山あいの集落や出雲平野、その先の日本海を見渡せます。山上に鎮座する神社の位置を、周辺の地形とともに確かめられる場所です。
現地に掲示された祭典日時
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| 撮影時に掲示されていた朝山神社の祭典日時。令和六年六月から令和七年五月までの日程です。 |
現地には、神迎祭・神送祭・新嘗祭・歳旦祭・祈年祭・例大祭の日程が掲示されていました。写真の日程は令和六年六月から令和七年五月までのものです。祭典日は年によって変わるため、参拝前に最新の案内をご確認ください。
朝山神社の御朱印|直筆御朱印を後日郵送
朝山神社の御朱印は、境内でその場に受け取る方式ではなく、現地で申し込んだ後に直筆御朱印を郵送していただく方式です。
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| 境内に掲示された御朱印授与の案内。送付用封筒を使って申し込みます。 |
現地掲示では、次の手順が案内されています。
- 備え付けの「送付用封筒」に郵便番号・住所・氏名を記入する。
- 御朱印に記載していただく参拝日を記入する。
- 封筒へ初穂料を入れ、クリップで口を閉じる。
- 封筒を賽銭箱へ納め、備え付けの棒を使って賽銭箱の底まで落とす。
後日、記入した住所へ直筆御朱印が郵送されます。初穂料の金額は写真から確認できないため、申し込み時の現地掲示に従ってください。
案内には、記入した個人情報は御朱印の郵送以外には使用しないこと、到着まで日数を要する場合があることも記されています。
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| 後日郵送された朝山神社の直筆御朱印。「出雲國神在月」の墨書と朱印が見られます。 |
御朱印には朝山神社の社名と参拝日が墨書され、神在月の御朱印には「出雲國神在月」の文字が添えられています。郵送方式のため、参拝当日に持ち帰る御朱印ではない点に注意が必要です。
宇比多伎山と朝山神社の立地
朝山神社は、出雲市街地の南側に連なる山地の一角に鎮座しています。『出雲国風土記』所載の宇比多伎山に比定される山の上にあり、周辺は朝山森林公園として整備されています。
鳥居から随神門、拝殿、本殿へと石段を上る境内構成は、山の斜面を生かしたものです。木々に囲まれた社殿と、雲井神苑から開ける眺望の対比からも、朝山郷を見渡す山上の古社であることが実感できます。
風土記に記された「毎朝通坐」という伝承と山上の立地を重ねると、大穴持命が眞玉著玉之邑日女命のもとへ通ったという物語が、朝山の地名と土地の記憶として受け継がれてきたことがうかがえます。
朝山神社のまとめ
朝山神社は、『出雲国風土記』神門郡条の「淺山社」に比定されるとともに、朝山郷の地名由来に登場する眞玉著玉之邑日女命を祀る古社です。
風土記に記された大穴持命の妻問いの伝承、宇比多伎山の山上に建つ拝殿と本殿、地域の信仰を伝える境内社は、古代から続く朝山の歴史を現在に伝えています。
なかでも朝山十九社は、神在月に八百万神が最初に滞在すると伝わる、朝山神社を象徴する場所です。社殿だけでなく、参道や山上からの眺望もあわせて歩くことで、風土記に残された神社と土地との結び付きを知ることができます。
朝山神社の基本情報・連絡先
| 神社名 | 朝山神社〈あさやまじんじゃ〉 |
|---|---|
| 風土記の社名 | 淺山社〈神門郡〉 |
| 主祭神 | 眞玉著玉之邑日女命 |
| 所在地 | 〒693-0213 島根県出雲市朝山町1404 |
| 電話番号 | 0853-48-0201〈朝山コミュニティセンター〉 |
| 公式サイト | 神社単独の公式サイトは確認できません。出雲観光ガイドなどの公式情報をご確認ください。 |
| 御朱印 | 直筆御朱印を後日郵送する方式です。境内備え付けの「送付用封筒」に郵便番号・住所・氏名・参拝日を記入し、初穂料を入れてクリップで閉じ、賽銭箱へ納めます。初穂料や最新の受付方法は現地掲示をご確認ください。 |
| 駐車場 | あり。駐車位置や利用条件は現地案内をご確認ください。 |
アクセス・Googleマップ
朝山神社は、出雲市朝山町の山上に鎮座しています。令和三年の豪雨で参道が被災しましたが、復旧工事が完了し、現在は境内まで自動車などで通行・参拝できると案内されています。山道では対向車や路面状況に注意し、現地の案内表示に従ってください。
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初掲載日:2026年8月27日
最終更新日:2026年8月27日

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