出雲の神在祭を行う神社|朝山・日御碕・出雲大社・佐太・万九千の伝承
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| 朝山・日御碕・出雲大社・佐太・万九千に伝わる神在祭を、神迎えから神等去出までたどります。 |
旧暦10月、全国の八百万の神々が出雲へ集まると伝えられる「神在月」。神在祭と聞くと出雲大社を思い浮かべますが、出雲地方には、神々を迎え、静かにお祀りし、見送る祭祀を伝える神社が複数あります。
この記事では、朝山神社・日御碕神社・出雲大社・佐太神社・万九千神社の五社を取り上げます。神々がいつ滞在すると伝えられるのか、どのような神事が行われるのか、そして『出雲国風土記』にどの社名で現れるのかを比べてみましょう。
五社の伝承を時系列に並べることはできますが、すべての神々が必ず五社を一列に巡るという共通の祭祀体系があるわけではありません。各神社には、それぞれの土地で受け継がれた神迎え・お忌み・神送りの伝承があります。この記事では、共通点と違いの両方を大切にして紹介します。
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出雲の神在祭を行う五社を比較
| 神社 | 風土記との関係 | 伝承上の時期 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| 朝山神社 | 神門郡「淺山社」に比定 | 旧暦10月1日~10日 | 朝山十九社で神々を最初に迎えると伝える |
| 日御碕神社 | 出雲郡「美佐伎社」に比定 | 旧暦10月11日~17日 | 神迎祭・龍蛇神社祭・神送祭を伝える海辺の神在社 |
| 出雲大社 | 出雲郡「杵築大社」 | 旧暦10月11日~17日 | 稲佐の浜で神迎え。十九社を宿所、上宮を神議りの場と伝える |
| 佐太神社 | 秋鹿郡「佐太大神社」「佐太御子社」と伝える | 現在は11月20日~25日 | 「お忌祭り」。神迎神事・神等去出神事・止神送神事を行う |
| 万九千神社 | 出雲郡「神代社」が後の万九千社と伝える | 旧暦10月17日~26日 | 神議りを締めくくり、直会ののち諸国へ旅立つと伝える |
同じ「神在祭」であっても、期間や神事名は同一ではありません。とくに「神等去出祭」は出雲大社だけの呼び名ではなく、佐太神社や万九千神社にも、それぞれの神送りの祭祀として伝わっています。
神在月の流れとして見る五社
神々が出雲大社へ向かう前に朝山神社へ立ち寄り、朝山十九社に滞在されると伝えられます。
日御碕神社では海辺の神在社として神迎祭・神送祭を伝えます。出雲大社では稲佐の浜から神々を迎え、十九社と上宮を中心に神在祭が行われます。
松江市鹿島町で「お忌祭り」と呼ばれる神在祭が行われます。11月30日には、止神送神事も伝わります。
神々が出雲路での神議りを締めくくり、直会を催したのち、諸国へ旅立つと伝えられます。
朝山神社|神々を最初に迎える伝承
朝山十九社に八百万神を迎える
朝山神社には、全国から出雲へ集まる神々が、出雲大社の神在祭に先立って最初に立ち寄られるという伝承があります。境内の朝山十九社は、八百万神の御旅社とされています。
旧暦10月1日に神々を迎え、10日までお祀りするのが朝山神社の神在祭です。山上の静かな境内で神々を迎える姿は、稲佐の浜の神迎神事とは異なる、山の神在祭の雰囲気を伝えています。
『出雲国風土記』では神門郡の「淺山社」に比定され、朝山郷条には、大穴持命が眞玉著玉之邑日女命のもとへ毎朝通ったことから「朝山」と呼ばれたという地名由来が記されています。ただし、この妻問いの伝承と現在の神在祭は、同じ話として風土記に書かれているわけではありません。
朝山神社の個別記事を読む日御碕神社|海辺で神々を迎え送る
日沉宮と神の宮からなる神在社
日本海を望む日御碕神社は、下の宮「日沉宮」と上の宮「神の宮」の二社からなる古社です。旧暦10月11日に神々を迎え、17日にお送りする神在祭を伝えます。期間中には龍蛇神社祭も行われます。
日御碕神社は、出雲大社・朝山神社・万九千神社・熊野大社とともに、出雲大社公式サイトで「旧暦出雲の神在社」として案内されたことがあります。一方、日程や参列の可否は年ごとの公式発表で確認する必要があります。
『出雲国風土記』出雲郡条の「美佐伎社」に比定されるとされます。神在月の祭祀は現在の伝承であり、風土記の社名記載そのものに、旧暦10月の神在祭が説明されているわけではありません。
日御碕神社の個別記事を読む出雲大社|神迎え・神議り・十九社
稲佐の浜から十九社・上宮へ
出雲大社の神在祭は、稲佐の浜で行われる神迎神事から始まります。御神火が焚かれる浜で八百万神を迎えたのち、神籬を先頭に神々を出雲大社へお迎えします。
境内東西の十九社は、神在祭の間に全国から集まった神々の宿所とされます。上宮は、神々がさまざまな縁について神議りを行う場所と伝えられます。期間中には御本殿で神在祭や縁結大祭が行われ、最終日に神等去出祭が斎行されます。
『出雲国風土記』には「杵築大社」として記され、杵築郷条には、大穴持命の宮を築くため神々が集まったという地名由来があります。ただし、これは現在の神在月の神議りとは目的も時期も異なる伝承です。
出雲大社の個別記事を読む佐太神社|お忌祭りと止神送
11月20日から25日まで続く神在祭
佐太神社の神在祭は、通称「お忌祭り」と呼ばれます。現在は11月20日から25日まで行われ、20日に神迎神事、25日に神等去出神事が斎行されます。
さらに11月30日には、25日の神送りでお帰りにならなかった神々をお送りする「止神送神事」が行われます。佐太神社には、半年後の5月に神在祭裏月祭と裏月祭止神送神事があることも大きな特徴です。
お忌祭りの名が示すように、神在祭は本来、にぎやかな催しだけではありません。神々がお鎮まりになる期間として静粛を守り、慎んでお迎えする祭祀です。『出雲国風土記』には、神名火山の麓に鎮座する佐太大神社、あるいは佐太御子社として記される古社と伝えられます。
佐太神社の個別記事を読む万九千神社|直会と神等去出
神議りを締めくくり、諸国へ旅立つ
万九千神社には、出雲に集った八百万神が最後に立ち寄り、神議りを締めくくったのち、直会という神宴を催すという伝承があります。旧暦10月17日から26日までを「神在」または「お忌み」と称します。
17日の早朝には、斐伊川の水辺で神迎えにあたる龍神祭が非公開で行われます。26日には湯立神事に続いて神等去出神事が斎行され、神々は直会ののち、翌朝早く諸国へ旅立つと伝えられます。鎮座地周辺の「神立」という地名も、神々のお立ちに結び付けて語られます。
万九千社は、『出雲国風土記』の「神代社」が後の万九千社にあたると伝えられています。現在は立虫神社の境内社ですが、風土記の「立虫社」と「神代社」は別々の社名です。万九千社と立虫神社の由緒を混同しないことが大切です。
万九千神社の個別記事を読む『出雲国風土記』と五社の神在祭
朝山神社・日御碕神社・出雲大社・佐太神社・万九千神社は、それぞれ『出雲国風土記』に記された社とのつながりを伝えます。しかし、天平5年(733)の風土記本文に、「旧暦10月に全国の神々が出雲へ集まり、五社を巡って神議りをする」という現在の神在月伝承は書かれていません。
風土記にある社名や地名由来と、後世に展開した神在月の祭祀は、いったん時代を分けて考える必要があります。そのうえで現地を訪ねると、古代から続く祭祀の場所に、長い年月をかけて新たな伝承が重なってきたことが見えてきます。
詳しい文献の流れは、「『出雲国風土記』に神在月は書かれている?」で紹介しています。
2026年の五社の主な神在祭日程
旧暦に合わせる神社は新暦の日付が毎年変わります。天候、交通事情、祭典運営などにより、参列・撮影・立入りの扱いが変更されることもあります。
| 神社 | 期間・主な祭典 | 確認先 |
|---|---|---|
| 朝山神社 | 11月9日~18日/神迎祭は11月9日 | 島根県公式観光情報・現地案内 |
| 日御碕神社 | 11月19日~25日/祭典詳細は公式発表を確認 | 日御碕神社公式サイト |
| 出雲大社 | 11月18日 神迎神事・神迎祭/19・23・25日 神在祭/25日 神等去出祭 | 出雲大社公式祭日表 |
| 佐太神社 | 11月20日~25日/11月30日 止神送神事 | 佐太神社公式祭事暦 |
| 万九千神社 | 11月25日~12月4日/12月4日 大祭・湯立神事・神等去出祭 | 万九千神社公式サイト |
出雲大社の詳しい時間、一般参列の可否、交通・駐車場については、「【2026年】出雲の神在月はいつ?」もあわせてご覧ください。
神在祭期間中に参拝するときの注意
- 祭典の公開範囲を確認する:龍神祭など、神職だけで行われる非公開神事があります。
- 撮影より祭祀を優先する:神事中は撮影禁止や立入り制限が設けられる場合があります。
- 静粛を守る:神在祭は「お忌み」の期間でもあります。大声や騒音を避け、静かに参拝します。
- 道路情報を確認する:出雲大社・日御碕周辺は混雑しやすく、日御碕方面には迂回路が限られます。
- 五社を一日で回ることを目的にしない:祭祀日程は重なり方が異なります。神々を迎え、滞在を見守り、見送る流れを数日に分けてたどるのがおすすめです。
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出雲の神在祭を行う神社のよくある質問
Q.出雲の神在祭は出雲大社だけで行われますか?
A.いいえ。出雲地方の複数の神社で、それぞれ異なる日程と伝承に基づく神在祭が行われます。この記事では朝山神社・日御碕神社・出雲大社・佐太神社・万九千神社を紹介しています。
Q.五社は一日で巡れますか?
A.所在地だけを回ることは不可能ではありませんが、神在祭の意味をたどるならおすすめしません。祭祀の日程が異なるため、神迎え・お忌み・神送りの時期に合わせ、複数日に分けて参拝する方が理解しやすくなります。
Q.万九千神社が神々の最後の滞在地なのですか?
A.万九千神社には、神々が最後に立ち寄って直会を催し、諸国へ旅立つという伝承があります。一方、佐太神社などにも独自の神送りがあり、出雲全体で一つだけの経路が定められているわけではありません。
Q.五社の神在祭は『出雲国風土記』に書かれていますか?
A.五社は風土記掲載社とのつながりを伝えますが、現在知られる形の神在月や五社の神在祭の流れが、そのまま風土記本文に記されているわけではありません。
まとめ|五社の違いを知ると、神在月の出雲が立体的に見える
朝山神社では神々を最初に迎える伝承、日御碕神社では海辺の神迎えと神送り、出雲大社では稲佐の浜・十九社・上宮を中心とする神議り、佐太神社では「お忌祭り」と止神送、万九千神社では直会と神等去出が伝えられています。
五社の祭祀を一つの物語にまとめすぎず、それぞれの土地が守ってきた伝承として見ることが大切です。『出雲国風土記』に残る古代の社名と、後世に育まれた神在月の信仰を重ねながら歩くと、神々を迎える出雲の風景が、より深く感じられるはずです。


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