『出雲国風土記』本文に登場する神様一覧

2026年9月11日金曜日

古代出雲 出雲の神様 出雲国風土記 出雲神話 神様一覧

『出雲国風土記』本文に登場する神様一覧

『出雲国風土記』に登場する神様一覧を表現した出雲の山々と神々の水墨画風イメージ
『出雲国風土記』本文に登場する神々を、系譜や登場地とともに整理。画像はAI生成による水墨画風イメージです。

『出雲国風土記』には、大穴持命や須佐能袁命だけでなく、 『古事記』『日本書紀』ではあまり知られていない、 出雲の土地と深く結びついた神々が数多く登場します。

この記事では、神社一覧に社名だけが記されるものではなく、 『出雲国風土記』本文の郡名・郷名の由来、神話、系譜、山野などの記述に 固有名をもって実際に登場する神を整理しました。

この基準で整理すると、本文で確認できる神は約50柱です。

【この一覧の数え方】
・本文中に固有神名が記されている神を対象としています。
・399社の神社一覧に「社名だけ」で現れる神は、この一覧には含めません。
・同じ神と判断できる神号・異称は原則として1柱にまとめています。
・本文上の関係と、後世の『古事記』『日本書紀』との同一神説は区別しています。
・写本や校訂本によって「比売/日女」「乎/袁」など表記が異なる場合があります。

『出雲国風土記』本文に登場する神様約50柱一覧

No. 神名 読み 異表記・別称 系譜・関係 登場箇所 関連神社・伝承地 現在地 ブログ記事
1 八束水臣津野命 やつかみずおみつぬのみこと 意美豆努命・伊美豆努命など 国引き神話の中心神 意宇郡国引き神話、島根郡、出雲郡ほか 長浜神社など 出雲市西園町周辺ほか 八束水臣津野命とは?
2 大穴持命 おおなもちのみこと 所造天下大神・所造天下大穴持命など 多数の妻神・御子神を持つ、『出雲国風土記』を代表する大神 意宇郡・島根郡・秋鹿郡・出雲郡・神門郡・飯石郡・仁多郡・大原郡など 出雲大社ほか多数 島根県東部各地 『出雲国風土記』とは|国の姿・神々・9つの郡構成
3 大国魂命 おおくにたまのみこと 大国御魂命など 大穴持命とは別神とする説が有力 意宇郡・飯梨郷 飯梨郷伝承地 安来市飯梨町周辺
4 布都努志命 ふつぬしのみこと 布都怒志命など 国土平定に関係する神 意宇郡・楯縫郷、山国郷 意宇郡東部の伝承地 安来市周辺
5 須佐能袁命 すさのおのみこと 神須佐能袁命・須佐能乎命など 多数の御子神を持つ 意宇郡・島根郡F・秋鹿郡・神門郡・飯石郡・大原郡など 須佐神社ほか 出雲市佐田町須佐ほか 出雲神話の舞台まとめ
6 青幡佐久佐日古命 あおはたさくさひこのみこと 青幡佐草日古命など 須佐能袁命の御子 意宇郡・大草郷、大原郡・高麻山 六所神社・八重垣神社など 松江市大草町・佐草町周辺 六所神社(佐久佐社)
7 山代日子命 やましろひこのみこと 山代日子 大穴持命の御子 意宇郡・山代郷 山代郷伝承地 松江市山代町周辺
8 野城大神 のぎのおおかみ 野城神 天穂日命との同一神説あり 意宇郡・野城駅 能義地域の神社・伝承地 安来市能義町周辺 4柱の神々と出雲神話の全体像
9 熊野加武呂乃命 くまのかむろのみこと 熊野加武呂命 本文では伊差奈枳命の御子として記される 意宇郡・出雲神戸 熊野大社 松江市八雲町熊野 熊野大社
10 熊野大神命 くまのおおかみのみこと 熊野大神 熊野加武呂乃命・須佐能袁命との同一視説あり 島根郡・朝酌郷 熊野大社との関連 松江市周辺 熊野大社
11 阿遅須枳高日子命 あぢすきたかひこのみこと 阿遅須伎高日子命・阿遲須枳高日子根命など 大穴持命の御子 意宇郡賀茂神戸・神門郡高岸郷・仁多郡三沢郷など 三澤神社・阿須伎神社など 奥出雲町三沢、出雲市など 三澤神社(弎澤社)
12 伊差奈枳命 いざなきのみこと 伊弉諾命・伊邪那岐命など 熊野加武呂乃命・都久豆美命の親神として登場 意宇郡・島根郡 関連社複数 島根県東部 神魂神社
13 伊弉那彌命 いざなみのみこと 伊邪那美命・伊弉冉命など 記紀のイザナミに相当 神門郡・古志郷 揖夜神社などとの関連 松江市東出雲町周辺 揖夜神社(伊布夜社)
14 天甕津日女命 あめのみかつひめのみこと 天瓺津日女命など写本差あり 赤衾伊農意保須美比古佐和気能命の后として記される 秋鹿郡・伊農郷 伊農郷伝承地 松江市・出雲市境周辺
15 赤衾伊農意保須美比古佐和気能命 あかふすまいぬおおすみひこさわけのみこと 写本による字形差あり 八束水臣津野命の御子 出雲郡・伊努郷 伊努神社など 出雲市西林木町周辺 出雲郡の郷里と駅家一覧
16 奴奈宜波比売命 ぬながわひめのみこと 奴奈宣波比売命・沼河比売など 大穴持命の妻。御穂須須美命の母 島根郡・美保郷 美保関地域 松江市美保関町 嶋根郡の郷里と駅家一覧
17 神意支都久辰為命 おきつくしいのみこと 意支都久辰為命 奴奈宜波比売命の祖父 島根郡・美保郷 美保郷伝承 松江市美保関町 嶋根郡の郷里と駅家一覧
18 俾都久辰為命 へつくしいのみこと 写本による字形差あり 奴奈宜波比売命の父 島根郡・美保郷 美保郷伝承 松江市美保関町 嶋根郡の郷里と駅家一覧
19 御穂須須美命 みほすすみのみこと 御穂須須美 大穴持命と奴奈宜波比売命の御子 島根郡・美保郷 美保関地域 松江市美保関町 嶋根郡の郷里と駅家一覧
20 都留支日子命 つるぎひこのみこと 都留支日子 須佐能袁命の御子 島根郡・山口郷 山口郷伝承地 松江市東部 嶋根郡の郷里と駅家一覧
21 国忍別命 くにおしわけのみこと 国忍別 須佐能袁命の御子 島根郡・方結郷 方結郷伝承地 松江市美保関町周辺 嶋根郡の郷里と駅家一覧
22 磐坂日子命 いわさかひこのみこと 磐坂日子 須佐能袁命の御子 秋鹿郡・恵曇郷 恵曇地域 松江市鹿島町恵曇 秋鹿郡の寺院と神社一覧
23 衝桙等乎而留比古命 つきほことおるひこのみこと 衝桙等番留比古命など 須佐能袁命の御子 秋鹿郡・多太郷 多太郷伝承地 松江市鹿島町周辺 秋鹿郡の寺院と神社一覧
24 和加布都努志能命 わかふつぬしのみこと 和加布都努志命 大穴持命の御子 秋鹿郡・大野郷、出雲郡・美談郷 美談神社など 出雲市美談町ほか 秋鹿郡の寺院と神社一覧
25 秋鹿日女命 あきかひめのみこと 秋鹿比売命など 秋鹿郡名の由来となる女神 秋鹿郡・総記 秋鹿神社 松江市秋鹿町 秋鹿神社(秋鹿社)
26 神魂命 かみむすひのみこと 神産巣日神・神皇産霊神など 多数の御子神を持つ祖神 島根郡・楯縫郡・出雲郡・神門郡など 神魂神社など 松江市大庭町ほか 神魂伊能知奴志神社(命主社)
27 天御鳥命 あめのみとりのみこと 天之御鳥命など 神魂命の御子として楯作りに関わる 楯縫郡・郡名由来 楯縫郡伝承地 出雲市平田地域
28 天御梶日女命 あめのみかじひめのみこと 天御梶比売命など 阿遅須枳高日子命の后。多伎都比古命の母 楯縫郡・神名樋山 多久神社・久多美神社などとの関連 出雲市多久町周辺
29 多伎都比古命 たきつひこのみこと 多伎都比古 阿遅須枳高日子命と天御梶日女命の御子 楯縫郡・神名樋山 多久地域 出雲市多久町周辺
30 宇乃治比古命 うのぢひこのみこと 宇能治比古命 須義禰命の御子 楯縫郡・沼田郷、大原郡・海潮郷 宇能遅神社など 出雲市・雲南市周辺 宇能遅神社(宇乃遅社)
31 須義禰命 すがねのみこと 須美禰命など写本差あり 宇乃治比古命の御祖神 大原郡・海潮郷 海潮郷伝承地 雲南市大東町海潮周辺 宇能遅神社(宇乃遅社)
32 宇夜都弁命 うやつべのみこと 宇夜都鄙命など 天降った神として登場 出雲郡・健部郷(旧宇夜里) 健部郷伝承地 出雲市斐川町周辺 出雲郡の郷里と駅家一覧
33 天津枳値可美高日子命 あまつきちかみたかひこのみこと 薦枕志都沼値・薦枕志都治値 神魂命の御子 出雲郡・漆沼郷 漆沼郷伝承地 出雲市斐川町周辺 出雲郡の郷里と駅家一覧
34 綾門日女命 あやとひめのみこと 綾門比女命 神魂命の御子。大穴持命が妻問いした女神 出雲郡・宇賀郷 宇賀郷・宇賀神社周辺 出雲市口宇賀町周辺 宇賀神社(宇加社・彌努波社)
35 伎比佐加美高日子命 きひさかみたかひこのみこと 写本による字形差あり 神名火山に坐す神 出雲郡・神名火山 神名火山 出雲市斐川町・仏経山周辺 出雲郡の郷里と駅家一覧
36 真玉著玉之邑日女命 またまつくたまのむらひめのみこと 真玉着玉之邑日女命 神魂命の御子。大穴持命が妻問いした女神 神門郡・朝山郷 朝山神社 出雲市朝山町 出雲の神在祭を行う神社|朝山神社ほか
37 八野若日女命 やのわかひめのみこと 八野若日女 須佐能袁命の御子。大穴持命が妻問いした女神 神門郡・八野郷 八野地域 出雲市矢野町周辺
38 和加須世理比売命 わかすせりひめのみこと 和加須世理比売 須佐能袁命の御子。大穴持命の妻 神門郡・滑狭郷 滑狭郷伝承地 出雲市湖陵町周辺
39 塩冶毘古能命 やむやひこのみこと 塩冶毘古命 阿遅須枳高日子命の御子 神門郡・塩冶郷 塩冶神社など 出雲市塩冶町周辺
40 阿陀加夜努志多伎吉比売命 あだかやぬしたききひめのみこと 阿陀加夜努志多伎多伎吉比売命など写本差あり 所造天下大神・大穴持命の御子 神門郡・多伎郷 多伎神社・多伎藝神社などとの関連 出雲市多伎町周辺 多伎藝神社(多支枳社)
41 久志伊奈太美等与麻奴良比売命 くしいなだみとよまぬらひめのみこと 櫛名田比売系の神名 須佐能袁命と深い関係を持つ女神 飯石郡・熊谷郷 熊谷郷伝承地 雲南市三刀屋町周辺 出雲神話の舞台まとめ
42 須久奈比古命 すくなひこのみこと 少彦名命・少名毘古那神など 大穴持命とともに天下を巡行 飯石郡・多禰郷 多禰郷伝承地 雲南市掛合町・吉田町周辺 出雲神話の舞台まとめ
43 伊毘志都幣命 いびしつべのみこと 伊毘志都弊命 天降神 飯石郡・郡名由来、飯石郷 飯石地域 雲南市三刀屋町周辺
44 波多都美命 はたつみのみこと 波多都美 天降神 飯石郡・波多郷 波多郷伝承地 雲南市掛合町波多周辺
45 伎自麻都美命 きじまつみのみこと 伎自麻都美 来島郷に坐す地域神 飯石郡・来島郷 来島郷伝承地 雲南市飯南町方面
46 樋速日子命 ひはやひこのみこと 樋速日命・樋速日神 斐伊郷に坐す神 大原郡・斐伊郷 斐伊郷伝承地 雲南市木次町周辺
47 阿波枳閇委奈佐比古命 あわきへわなさひこのみこと 写本・訓読による差あり 阿波との関係が論じられる地域神 大原郡・船岡山 船岡山周辺 雲南市大東町周辺
48 佐太大神 さだのおおかみ 佐太御子大神など 枳佐加比売命から生まれた神 島根郡・加賀神埼、秋鹿郡・神名火山 佐太神社 松江市鹿島町佐陀宮内 佐太神社(佐太御子社)
49 枳佐加比売命 きさかひめのみこと 支佐加比売命など 神魂命の御子。佐太大神の母 島根郡・加賀神埼 加賀神社・佐太神社との関連 松江市島根町加賀・鹿島町 佐太神社(佐太御子社)
50 麻須羅神 ますらかみ 麻須羅神 佐太大神出生説話に登場する男神 島根郡・加賀神埼 加賀の潜戸周辺 松江市島根町加賀 嶋根郡の郷里と駅家一覧
51 都久豆美命 つくづみのみこと 都久津美命など 伊差奈枳命の御子として記される 島根郡・千酌駅 爾佐神社などとの関連 松江市美保関町千酌 嶋根郡の郷里と駅家一覧
52 八尋鉾長依日子命 やひろほこながよりひこのみこと 八尋鉾長依日子 神魂命の御子 島根郡・生馬郷 生馬地域 松江市西生馬町周辺 嶋根郡の郷里と駅家一覧
53 宇武賀比売命 うむかひめのみこと 宇武加比比売命など 神魂命の御子 島根郡・法吉郷 法吉神社 松江市法吉町周辺 嶋根郡の郷里と駅家一覧
【重要】50柱と53項目の違いについて
調査途中の異称・同一神判定を確認するため、この詳細表では本文に現れる神名単位を53項目まで掲げています。 そのうち、熊野大神命・熊野加武呂乃命・須佐能袁命などは同一神とみる説があり、 大穴持命にも「所造天下大神」など複数の神号があります。
したがって「神名の文字列数」と「独立した神格として数える柱数」は一致しません。 本記事では同一神と判断できるものを整理し、本文登場神を約50柱として扱います。

特に登場回数が多い神

『出雲国風土記』の神々の中でも、特に目立つのが 大穴持命です。

大穴持命は「所造天下大神」とも称され、 国土を造った大神として各地の郷名由来に登場します。 妻問い、国巡り、土地の選定など、 出雲各地の地名そのものと結びついていることが大きな特徴です。

須佐能袁命の御子神たち

『出雲国風土記』には、 須佐能袁命だけでなく、その御子とされる地域神が数多く登場します。

青幡佐久佐日古命、都留支日子命、国忍別命、 磐坂日子命、衝桙等乎而留比古命、 八野若日女命、和加須世理比売命などです。

これらの神々は、それぞれ出雲各地の郷名由来と深く結びついており、 記紀神話とは少し違った 「土地の神としての須佐能袁命一族」 を見ることができます。

神魂命から広がる神々の系譜

もう一つ注目したいのが神魂命です。

『出雲国風土記』では、 八尋鉾長依日子命、宇武賀比売命、枳佐加比売命、 天御鳥命、天津枳値可美高日子命、 綾門日女命、真玉著玉之邑日女命など、 神魂命につながる神々が各地に登場します。

『出雲国風土記』を神々の系譜から読んでいくと、 神話の物語だけでなく、 古代出雲の土地と神々がどのように結びつけられていたのか が見えてきます。

『古事記』『日本書紀』と同じ神とは限らない

注意したいのは、 『出雲国風土記』に登場する神を、 現在一般的に知られている記紀神話の神へ すべて置き換えて考えることはできないという点です。

たとえば大国魂命は、 大穴持命と同じ神と考えられることもありますが、 『出雲国風土記』の飯梨郷では 「天降った神」として独立して記されています。

また、熊野大神命、熊野加武呂乃命、須佐能袁命の関係にも さまざまな解釈があります。

この一覧では、 後世の同一神説をそのまま『出雲国風土記』本文の事実とはせず、 風土記にどの名前で記されているかを優先しています。

次は「399社の神社一覧」と照合します

この記事で整理したのは、 『出雲国風土記』本文の物語・地名由来などに 固有名をもって登場する神々です。

一方、『出雲国風土記』には、 神祇官に登録された神社と登録されなかった神社を合わせて 多数の神社が記されています。

その中には、 本文の説話には登場せず、 神社名の中だけに神名が残されている例 もあります。

今後は、 「本文に登場する神」「神社名にのみ現れる神」、 さらに 「異称・別名なので同一神と考えられるもの」 を分けて整理していきます。

まとめ

『出雲国風土記』には、 大穴持命・須佐能袁命といったよく知られた神だけでなく、 秋鹿日女命、伊毘志都幣命、波多都美命、 宇夜都弁命、阿波枳閇委奈佐比古命など、 出雲の土地に深く結びついた神々が数多く登場します。

神名だけを追うのではなく、 「どの土地に現れ、誰の御子で、どの地名の由来になったのか」 を見ていくことで、 『出雲国風土記』の世界はさらに立体的に見えてきます。

当ブログでは、これらの神々に関係する 『出雲国風土記』掲載神社を実際に訪ねながら紹介しています。 各神社の記事とあわせて、古代出雲の神々の世界をたどってみてください。

参考:『出雲国風土記』本文、島根県古代文化センター『解説 出雲国風土記』、 國學院大學 古典文化学事業・神名データベース等。
※神名の読み・表記・神々の同一性については諸説があります。

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