【出雲国風土記】とは|国の姿・神々・9つの郡構成と社399所

2020年6月13日土曜日

意宇郡 秋鹿郡 出雲郡 出雲国風土記 出雲神話 楯縫郡 神門郡 仁多郡 大原郡 嶋根郡 八雲立つ 八束水臣津野命 飯石郡

【出雲国風土記】とは|国の姿・神々・9つの郡構成と社399所

出雲国風土記 巻頭 国の総括的記述
『出雲国風土記』 巻頭「国の総括的記述」より

『出雲国風土記』は奈良時代(天平5年/733年)にまとめられた、古代出雲国の公式な地理・文化・信仰レポートです。 国の形、山や海、産物、神々が宿る場所、そして集落の呼び名まで、ものすごく細かく書かれています。

特に注目すべきは、神社が399社も記録されていること。そのうち 184社は「神祇官に在り」=国家公認の格式ある神社として扱われ、 215社は「神祇官に在らず」=地域の鎮守・生活の神として記されています。 これは当時の“信仰の地図”そのものです。

出雲国は9つの郡(郡=こおり)から成り、郡ごとに寺院と神社の一覧が載っています。 当ブログでは、各郡ごとに「風土記に出てくる神社名 → 現在伝わる社名」「所在地」「参拝メモ」をまとめ、 写真つきで順番に現地を訪ね歩いています。現地巡り・御朱印巡りの下調べに使ってください。

出雲国はどんな国だった?(ざっくり現代語)

風土記の冒頭では「東と南は山、 西と北は海に接している」と書かれています。 つまり内陸は山と谷、外側は海と水運。その地形のなかに、集落・港・祈りの場所が分布していたというイメージです。

また「山野・浜浦の場所」「鳥獣のすみか」「魚貝・海藻の種類」など、 資源・産物まで一通り列挙しようとした“調査報告書”でもあります。 地名の由来や神様の物語も書かれていて、ただの地誌ではなく神話と暮らしが地続きなのが出雲国風土記の面白さです。

そして国名「出雲(いずも)」がどう呼ばれるようになったのかも書かれています。 「八雲立つ」という有名な言葉は、ここに記された由来の一部です。

原文と読み下し(ルビ付きで掲載)

▼ 出雲國風土記 序文・国の総括的記述をひらく
出雲國風土記
國の大體おほかたは、ひむがしはじめとし、にしみなみをはりとす。ひむがしみなみとは山にして、西と北とは海にけり。
東西一百三十七里一十九歩。
南北一百八十二里一百九十三歩。

(中略・距離計算のくだり)

ろう枝葉しえふを細思し、詞源しげん裁定さいぢやうす。亦、山野さんや濱浦ひんぽところ鳥獸ていじうすみか魚貝ぎよばい海菜かいさいたぐいいと繁多さはにして、悉には陳べず。然はあれど止むことをざるは、粗梗槪ほぼあらましを擧げて、ふみおもむきを成しつ。
出雲いずもなづくる所以ゆゑは、八束水臣津野命やつかみづのおみつぬのみこと りたまひしく、「八雲立つ」とりたまひき。故、八雲立つ出雲と云ふ。
合はせて神社かみのやしろ三百九十九所。
一百八十四所 神祇官じんぎくわんに在り。
二百一十五所 神祇官に在らず。
九郡。さと六十二。こざと一百八十一。餘戶あまりべ四。驛家うまや六。神戶かむべ七。
以下、各郡の規模・郷(さと)の数・駅家(うまや=官道の宿駅)・神戸(かんべ=神社に属する奉仕民)などが列挙される。
意宇郡(おうのこおり) 郷十一 …
嶋根郡(しまねのこおり) 郷八 …
秋鹿郡(あいかのこおり) 郷四 …
楯縫郡(たてぬいのこおり) 郷四 …
出雲郡(いづものこおり) 郷八 …
神門郡(かむどのこおり) 郷八 …
飯石郡(いひしのこおり) 郷七 …
仁多郡(にたのこおり) 郷四 …
大原郡(おほはらのこおり) 郷八 …
また、郷の字(呼び名)は霊亀元年(715年)の制度で里を郷に改め、 神亀三年(726年)の民部省の指示であらためられた、といった行政メモもここに記録されます。

出雲国の9郡(こおり)と、その役割

風土記には、出雲国は「九郡」から成ると書かれています。郡ごとに地理・産物・神社の性格がはっきり違います。
それぞれの郡には「寺院の一覧」「神祇官に属する神社」「神祇官に属さない神社」の3本立てがあり、当時の信仰の勢力図そのものです。

出雲国の9郡(こおり)と項目別リスト

各郡ごとに「寺院・神社」「郷里・駅家・神戸などの行政メモ」「山野河川海岸通道(川・山・海・産物の記述)」をまとめています。
気になる郡から読んで、現地参拝のルート決めに使ってください。

出雲国の9郡(こおり)と項目別リスト

各郡ごとに「郷里・駅家・神戸など行政メモ」「寺院・神社」「山野河川海岸通道(山・川・海・産物などの地誌)」をまとめています。
行政・信仰・地形がセットで見えるので、参拝や聖地巡りの計画に使いやすい構成です。

  1. 意宇郡(おうのこおり)
    国府・総社(六所神社)・熊野大社など、出雲国の政治と祭祀の中心地。
  2. 嶋根郡(しまねのこおり)
    島根半島沿岸。美保神社など、海・港・航海安全の神々が並ぶエリア。
  3. 秋鹿郡(あいかのこおり)
    宍道湖北岸〜松江市西部。湖と水運の暮らし、生活信仰の社が多い地域。
  4. 楯縫郡(たてぬいのこおり)
    斐伊川流域〜出雲東部と考えられる一帯。古い社名・伝承地名が多い地区。
  5. 出雲郡(いづものこおり)
    稲佐の浜・日御碕など“出雲神話の舞台”が集中する、海と神話のエリア。
  6. 神門郡(かむどのこおり)
    出雲大社周辺〜西部。須佐之男命・大国主命ゆかりの古社が今も祀られる地域。
  7. 飯石郡(いいしのこおり)
    雲南市・飯石エリア。谷あいの鎮守や素朴な祈りがそのまま残る山間の郡。
  8. 仁多郡(にたのこおり)
    奥出雲・横田方面。たたら製鉄と山の神への信仰が深く結びついた土地。
  9. 大原郡(おおはらのこおり)
    雲南市大東町・加茂町方面。古道・棚田・里山の景観と静かな社が残る“里山の記憶”ゾーン。

巡拝・現地ルートの決め方

おすすめの見方
① 気になる郡のまとめ記事を開く(例:意宇郡・嶋根郡など)
② そこに載っている「神祇官に属する神社」や「地域の鎮守」のリストから、行きたい神社をピックアップ
③ 各神社の個別記事で、
 ・拝殿/本殿の写真
 ・境内社
 ・御朱印の有無
 ・駐車場の様子
 を確認して、1日コースを決めるのが一番ラクです。

各郡記事の最後には「次に読みたい/関連スポット」を置いているので、隣の郡にもすぐ飛べます。 出雲国をまるごと歩く旅、ぜひどうぞ。

最終更新:2025年11月1日
出雲の神様に会いに行こう!~出雲国風土記探訪~
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